集中と実感について
先日、新幹線乗車前に立ち寄った書店で、村上龍 著「無趣味のすすめ」という本に出合い、移動中に一気に読みました。読みやすいエッセーで興味深い内容が多かったですが、中でも特に「集中と緊張とリラックス」の項の内容が印象に残りました。以下にそのほんの一部を紹介します。
『集中して小説を書いた後、私は充実感と達成感と、それに精神の安息を得ることができる。小説を書いたあとには、リゾートに行ってリフレッシュしたいとか、リラックスしたいとか思わない。リゾートに行きたくなるのは、執筆以外の煩わしさから逃れたいときだ・・・中略・・・全力で取り組む懸案の仕事を妥協なく終わらせたいという欲求はあるが、早くオフを楽しみたいなどとは思わない』
思い返せば、かつて、30代前半まで銀行に勤めていた私は、年2回の連続休暇に旅行に行くのが待ち遠しくてしょうがなかったような気がします。でも、経営コンサルティングとう仕事に身を置くようになってからの自分は当時の自分とは明らかに違います。
今も、仕事の合間を縫って年に2回は、家族で旅行に行っています。もちろん、それ自体楽しいし、リフレッシュ・リラックスできる貴重な時間であることは言うまでもありません。今こうして仕事ができていることのベースにある家族のありがたさや今という時の幸せを実感できるひとときです。でも、仕事をしていて、「あー早く旅行に行きたいなぁ・・・」とはあまり思わない気がします。なぜか?それは、経営コンサルティングという仕事から得られる「実感」にある気がします。
この仕事を「楽しい」とまで、あえて言うつもりはありません。常に期限や準備に追われ、日々各地を飛び回り、休みも正直あまりなく、基本的に追われる毎日です。契約先企業の成長を考え悩むことも多いと思います。でも、自ら考え、自ら動き、新たなやり方やアイディアを思いつくとき、新たな顧問先・コンサル先に向き合うとき、その会社の経営者をはじめとした様々な人たちと一緒になって進める仕事は「実感(充実感に近い感覚)」に満ちています。これからのその会社の変化をイメージするとワクワクしますし、小さくても変化を感じるとき、純粋に「面白い」と感じます。
コンサル先での真剣な検討ややりとりを通した密度の濃い集中した時間、都度感じるその会社の成長と社員の成長自体が、私の中で大きな「実感」となっています。
そして、それ以上に、経営者やその会社の社員の方々から頂く感謝の言葉や態度から得られる、私の中での「実感」「感謝」は何ものにも代え難いものです。大げさなようですが、生きている「実感」を得ることがこの仕事には本当にあります。
こうした「集中」した時間から得られる「実感」が、私の明日への「集中」や次の「実感」を生み出す最大のエネルギーであり、私自身の成長の糧だと感じています。