他にない、ここにしかない」お店と経営戦略 ~私の大好きな洋菓子店
6月になり、低温続きだった天候も、梅雨入り前の爽やかな天気とともに気温も徐々に上がってきましたね。
消費と気温や天候・季節感は密接です。特に、「季節は先取り」が業界の別なく一般には好ましいと言われます。夏の到来が早い(暑さが早くやってくる)、冬の到来が早い(早くに冷え込んでくる)ことは様々な早期消費(需要)確保につながります(夏物の服やエアコンの購入等)。ただ、その逆もあります。お菓子業界は、どちらかといえば冷夏を好むようです。暑いとお菓子の売れ行きは鈍るようで、某菓子卸売業の会社の社長さんも今夏はどうなるかと気をもんでおられました。
ところで、
お菓子といえば、皆さんは、甘いもの(お菓子)は得意ですか?
私は元来、そんなに甘いものを積極的に食べるということはありませんでした。
ですが、あるきっかけがあって、2年ほど前からあるお店のお菓子にはまっています。きっかけは、知人から頂いた「クッキーの詰め合わせ」でした。
コーヒー好きな私は、たまたま休日に自宅で、コーヒーのお伴として、そのクッキーを食べてびっくりしました。「えっー、こんな美味しいクッキーがあるんだ」とある種 感動した(決して大げさではなく)ことを今でも良く覚えています。
しかも、そのお店は、私の自宅から、車で15分ほどのところにあるいわゆる地元のお店じゃないですか・・・。さっそく、お店に行って、焼き菓子(クッキーやマドレーヌ等)や生菓子(ケーキ)を買い込んできたことを覚えています。
それ以来、リピーターです。個人的に食べるために買いに行くこともありますし、贈答用としても自信を持ってお贈りできる商品なのでとても助かっています。
お店は、「パテスリー キャロリーヌ」。http://www.patisserie-caroline.com/
都内 練馬区春日町の住宅地の一角にある、決して交通の便がいいというわけでもなく、静かな並木の通りに面したおしゃれな外観が目印です。
さほど大きくない店内には、平日でも時間帯にかかわらず多くのお客さんで賑わっています。最近になって知ったことなのですが、このお店のオーナーパティシエは、近頃よくテレビ番組(世界一受けたい授業)に出演している「中川二郎 さん」です。テレビには、目白大学の教授という肩書きで出演されていますから、調べない限り、中川さんがこのお店を経営していることは広くは知られないと思います(お店の名前が出たらきっとお客さんが大挙して押し寄せてくると思いますので、個人的には今の状態の方がありがたい・・・と思ってしまいます)。
つまり、テレビを通してさりげなくお店の宣伝もいくらでも出来るわけですが、一切していないところが、また、心憎いところです。
先日、お店に行ったら、中川シェフが、カウンターに出てきてごく普通に接客をしていて、あのテレビで見るのと変わらない飾らない柔和な感じのそのままの人で、親近感を感じました。
このお店のすごいところは、以下の点です。
・焼き菓子の品質表示をみると、添加物等一切余計なものは使っておらず、最低限の原材料をシンプルに使った商品ばかりなこと。この材料だけでこんなに美味しい焼き菓子が出来るんだ・・・と驚かされます。
・焼き菓子・生菓子共に、商品のアイテム数の豊富なこと(私の一番のお気に入りは、チョコレートベースのクッキー。くせになり食べ始めると止まらなくなります・・・)。特に、生菓子はアイテム数が多く、どれも美味しそうに見えるので選ぶのに苦労します。
・生菓子は、平日の夕方に来店しても、まだ、次から次へとできあがった商品がショーケースに入れられていきます。でも、そのそばから売れていますから、売れ残った商品はどうなるんだろう・・・なんて考えずに安心して買えますよね。夕方になると、極端に店頭の商品を減らしていったり、ショーケースを見てがっかりさせられるようなお店とは大違いです・・・。
・店内スタッフの教育が徹底されていると感じます。どのスタッフも落ち着いた接客で気配りも行き届いていて接客態度は丁寧で感じのいいものです。えてして、人気のあるお店は、人気にあぐらをかいて雑になったりすることもありますが、一人一人の顧客を大事にしようとしているお店のコンセプトを感じることが出来ます。
・ポイントカードを導入しています。私は、よく足を運びますので、あっという間にポイントがたまる感じがして、お得感も高いです。
あえて経営的な視点で整理すれば・・・
特に派手な広告等のプロモーション施策を打つことなく、でも、商品自体の健康に配慮した製法と圧倒的な質の高さ・おいしさと、接客品質の高さ、お店の雰囲気の良さ等が、重なり合って再来店のシンプルな仕組みにつながり、口コミと合わさった形で新規顧客の来店誘致とリピーター確保につながっている様子がうかがえます。
つまり、わたし的に言えば、美味しい洋菓子といえば「パテスリー キャロリーヌ」しかなく、他の近隣のお店やデパート内のインショップのブランド知名の高いお店の商品も食べる機会はありますが(もちろん、そうしたお店の菓子が美味しくないわけでは決してありませんが)、少なくとも、私が最初にキャロリーヌのお菓子を食べた時のような感動まではないので、結局は、キャロリーヌへ「わざわざ買いに行く」ということになるのです。
この、他の店ではなく「わざわざそこへ買いに行く」「わざわざ買いに来てくれる」これが、リピーターを確保するためのマーケティング戦略(リピート戦略を考える上で)のキーワードです。この考え方は、どんな業種にも当てはまる業種を超えた考え方と思って頂くとよいと思います。
皆さんの会社には、「他店や他社と価格で競争しなくていい製品・商品・サービス」がありますか?
この問いは、私がマーケティングや経営戦略等の講義の際に、受講者の皆さんによく問いかける質問です。すなわちそれは、私が中小企業の経営戦略・マーケティング戦略立案や、経営改革に取り組む際に、徹底して追求し、サポートしていくポイントでもあります。
とかく、価格競争ばかりが取りざたされる景気動向ですが、
特に中小・中堅企業は、自社にしかないもの(独自性)や他社とは違うポイント(差別化)を明確にして、自社の立ち位置をしかりと明確にして、真の顧客志向にたった経営・営業展開を行っていくことが、これからの経営に欠かせないポイントだと思います。
会社の独自性や差別性をしっかりと明確にして、かつ、顧客に効果的に発信して、会社の一層の成長につなげたいものですね!