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「環境変化」の「認識」と「対応」と「創造」

きっと、それほど混んでないだろう・・・。
そう思いながら、7月後半のとある平日、久しぶりに東京ディズニーランド(TDL)に行ってきました。

 

10時少し前に駐車場の入場ゲートを入った瞬間に、その予想は確信に変わりました。いつもならその時間では駐められるはずのないような(パークの入場ゲートからかなり近い)場所にすんなり駐車。
パーク内は、平日とは言え、夏休み。例年ならごった返すはずのあのTDLが、待ち時間も短く(これまでの感覚からすると、約半分といった感じでした)アトラクションに乗れるのは、いちゲストとしてはうれしい限りですが、経営コンサルタントとしては、TDLの現状はどうなっているのだろうか・・・と考えずにいられない気持ちにもなりました。
例えば、船に乗って世界を回る設定の「イッツアスモールワールド」などは、通常は二つあるレーンの一つしか動かしていなくてもお昼前の時間帯で20分待ちといった状況でしたので。

 

なぜ、混んでいないのではないかと予想していたかといえば、以下の2点です。
・震災や原発の影響で海外や地方の顧客が減少し、観光や出張等も含めて、間違いなく東京方面への流入は減っているはずと思っていたこと。
・ここ数ヶ月、TDLのテレビ露出(同パークの魅力を紹介する番組)があまりにも多く、特集や企画特番の目白押し、夏季限定での子供半額サービスや頻繁なテレビCM等、本来(独自のパークそのものの魅力によりリピーターを確保し続けてきた)TDLにとって必要のなかった大がかりな集客プロモーション施策がこれでもかと言うくらい打たれていたこと。

 

昨年の入場料金の値上げ等も含めて、パークそのものの魅力だけでシッカリとリピーターを確保できていたTDLやTDS(東京ディスニーシー)が、一転、必要に迫られた広告宣伝や「囲い込み型」のプロモーション(割引やクーポン等のつなぎ止め策)に躍起にならざるを得ないのは、間違いなく集客に苦戦しているのだろう・・・と思いながら見ていました。

 

運営会社のオリエンタルランドの経営戦略やマーケティング戦略は、まさに、顧客志向の考え方やマーケティングを学ぶ上でも、お手本になるような存在でしたから・・・。
「集客」「接客」「再来園(リピート集客)」の仕組み作りというサービス業におけるマーケティングの基本体系で考えると、どれをとっても理想的な同社が、入り口の「集客」や「リピーター」の呼び込みに苦労する状況は、これまでのTDLにはなかったことです。
でも、3月の震災以降の予測不能の「環境変化」は、そのパークとしての魅力を大きく上回る形で、ビジネスモデルの存立さえも揺るがすくらいのインパクトになってしまった訳です。

 

企業の規模にかかわらず、本来絶対の安泰などはないわけですが、それにしても、企業経営とは、緊張感の連続であり本当に難しいものだと、改めて痛感します。

 

昨日(8月5日)の日本経済新聞の朝刊に、タイムリーな話題として、同社のこの4月から6月の四半期決算の経営状況が載っていました。
同期間は、初の営業赤字とのことでした。四半期の最終損益は、38億円の赤字(前年同期は62億円の黒字)です。ちなみに、同期間の売上は、前年同期比43%減少。営業利益ベースでも30億円の赤字(前年同期は130億円の黒字)ですから、その状況がいかに顕著なものであるかがわかると思います。

 

ちなみに、現在行っている「子供半額」等の割引施策は、秋以降も続けるようです。この辺りからも、現状の集客の落ち込みが短期的なものでは決してないと考えている同社の危機感を感じました。

 

私が関わる経営コンサルティング先(中小・中堅企業)で会社の(中期)経営戦略を策定する際には、社内のプロジェクトチームのメンバー等と共に、必ずメンバー全員で一定の時間と体力をかけて各種の(外部環境・内部環境)現状分析を行います。
その際に、私がお話しすることは、
「環境変化の認識」 「環境変化への対応」 「環境変化の創造」 です。

 

環境変化の検証(現状分析)は、「今起こっていること」「今後起こる可能性があること」をいかに認識・予測し、メンバーで共有するかに始まり、その変化にいかに会社として対応していくかをイメージするか(戦略策定の前段階として)に続き、そして、最終的には、戦略策定のプロセスも含めて、自社が自らの手でこれまでにない新たな環境変化のうねりや波を自社自らの手で創り出していく存在となりうるかを客観的に検証できるかだと考えています。
特に、上記3つ目の 新たな「環境変化の創造」こそが、「会社の独自性」=「その会社でないと出来ない製品やサービスの提供」「その会社にしかないもの」「他社と価格競争しなくていい商品やサービスの保有」「こちらからプロモーション施策等を講じなくともわざわざ買ってもらえる(買いに来てくれる)もの」につながるのです。

 

「会社の独自性」を構築していくことは口で言うほど容易なことではありません。
でも、その独自性を見いだせる会社、そして実際にその独自性構築に向かって実行しきれる会社が、これからの世の中では、本当の成長を手にできる会社です。
逆に言えば、何らかの自社ならではの独自性を構築できない会社に、中長期的な成長は望めないといっても過言ではないのです。

 

ただし、一旦作り上げた独自性や変化の創造も、それ自体は作り上げた瞬間から陳腐化が始まる可能性をもつわけで、恒久的なものでは決してないのです。
常に、訪れる・押し寄せる変化に目を配り、先を読み、新たな手だてや戦略を講じつつ、一方でリスクを検証し、直面する困難を克服するための具体策を講じていくことが極めて大事だと言うことが、上記のTDLの事例を見てもおわかり頂けるかと思います。

 

TDLのパーク内は、いつもと変わらぬ「夢の国」でした。
エレクトリカルパレードを見ながら、パレードのキャラクターたちに向かって必死に手を振る小学校低学年の娘の様子を見てそう思いました。

 

台風の後、少し落ち着いていた気温も、また上昇に転じはじめ、暑い夏が戻ってきましたね。

 

もうすぐお盆ですが、お休みをとられる皆さん、今年の夏休みはいかが過ごされますか?